Brand : C.P. Company
Color : Navy Purple Blue Orange
Material : Wool 75%,Viscose 12%,Polyester 7%,Silk 3% Linen 3%
Size: 4
Model：175cm 65kg


1995年秋冬。
マッシモ・オスティが退任した直後のC.P. Companyは、“素材を語らない素材服”という新しい段階へ進み始めていました。
それまでブランドを支えていた機能主義やミリタリズムの表層を手放し、糸そのものの設計に思考を向けた時代。
本作は、その哲学のど真ん中に位置する一枚です。

構成は Wool 75%、Viscose 12%、Polyester 7%、Silk 3%、Linen 3%。
この数字だけで、当時のC.P. Companyの執念のような素材研究が読み取れます。
ウールが生地の骨格を形づくり、弾力と保温を担う。
ヴィスコースはそこに落ち感としなやかさを与え、シルクが微かな光の揺らぎを加える。
ポリエステルは構造を安定させ、そして最後に3%のリネンが、空気の抜け道を作る。
このわずか3%の麻が加わることで、ニット全体に“呼吸”が生まれる。
ウールだけでは成し得ない軽さと通気が加わり、着心地が格段に変わるのです。

肌触りは柔らかいのに、指先で押すとわずかな「ハリ」が返ってくる。
その感覚がまさにリネンの仕事。
乾いた質感と潤いのある糸のバランスが、奇跡的に釣り合っている。
こうした繊維設計は、当時ビエッラやプラートの名門紡績（Zegna Baruffa、Filivivi、Tollegno 1900など）が最も熱を入れていた領域であり、
C.P. Companyはその最新技術をいち早く取り入れていました。

そして何より、このニットの最大の見どころは**“織りのように見える編み”**という構造です。
チェックのように見えるその表情は、実はプリントでも織りでもなく、編み目そのものが格子を描いている。
凹凸を意図的に操作し、ヘリンボーンやハニカム編みを組み合わせることで、光の反射差によってパターンを浮かび上がらせています。
これがいわゆる「woven-look knit（織物風ニット）」と呼ばれる技術。
当時のイタリアの工業ニットの中でも、最も高度な編み制御の一つでした。

つまりこのニットは、“織りと編み”という本来交わらない二つの概念を、構造設計で融合させている。
その結果、ツイードのように見えるのに、着用するとウールニットらしい伸縮と軽さがある。
一見クラシック、触れるとモダン。この二重性がC.P. Companyの真骨頂です。

編地は中厚で、手に取るとずっしりとした密度を感じます。
しかし、着てみると不思議なほど軽く、体に沿う。
それは糸の張力とループ構造が絶妙に設計されているから。
縫製ではなく、糸の段階で「立体性」を仕込んでいる。
まるで建築のように緻密なニッティングです。

ドルマンスリーブに近い構造で、肩線を設けないパターンも特徴。
身体の動きに合わせて生地が自然に落ち、空気が通り抜ける。
リブの締めつけも強すぎず、構造としての安定感とリラックスを両立しています。


1995年当時、ストーンアイランドがガーメントダイや加工実験で「機能を外に出す」方向へ進んでいた一方で、
C.P. Companyはその逆を行っていました。
このニットのように、機能を内側に隠す。
構造や素材の中にこそ、知性が宿る。
それがオスティ以後のC.P.が選んだ道でした。

光の角度でチェックが浮かび上がり、陰で消える。
その儚さの中に、技術と感性のせめぎ合いが見える。
この一着には、“素材そのものをデザインする”という時代の熱が、確かに息づいています。

Measurements：サイズ情報

表記 : 4（日本メンズサイズL-XL相当）
平置き採寸[cm] : 肩幅 61cm 身幅 65cm 袖丈 65cm 着丈 70cm

Condition：商品状態

経年による着用感やネップ感はありますが、ダメージの見られないグッドコンディション。

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