Brand：LOEWE
Material：Cotton 90&/Polyurethane 10%
Color : Olive
Size : XL
Model : 175cm,65kg


2000年代前半、LOEWEはレザー専業の老舗としての矜持を保ちながら、メンズウェアにおける「構造」と「素材」の刷新へと大きく舵を切りました。
その中心にいたのが José Enrique Oña Selfa。
2002〜2006年の彼のディレクション期は、レザーを過剰に主張させるのではなく、服の骨格として内側に沈めるアプローチが特徴的です。
このコートは、まさにその思想を最も端正に落とし込んだアーカイブのひとつです。


スタンドカラーは、そのまま着るとオーセンティックな佇まい。
しかし襟を立てると、内部に仕込まれたラムレザーが滑らかな光沢とともに現れます。
外面には極力情報を出さず、見せるべき瞬間にだけ素材の格を示す。

この「抑制されたラグジュアリー」は、Oña期のLOEWEが得意としていた設計思想。
レザーを飾りではなく“構造の一部”として扱う姿勢が、このわずかな切替に凝縮されています。



ボディの生地は 90% Cotton / 10% Polyurethane。

高密度コットンのドライな質感に、ポリウレタンがわずかに混ざることで、“紙のようにハリを帯びた表情”と上品な耐久性を獲得しています。

当時のLOEWEが好んだ「硬質さ」と「軽さ」の共存がこの生地から生まれており、風に当たると立体的に動き、湿度を帯びた艶が出ないのが非常に美しい。



脇下にはベンチレーションホール、背面には重なり合う多層フラップ。
これらはフィールドコートやハンティングウェアの系譜にある実用ディテールですが、デザインとしては主張しないよう、巧妙にフラットへと整理されています。

比翼のフロント、ほんの少し高めに設定されたウエストベルト、外側からは見えないレザー補強。これらの構造が一つにまとまることで、視覚的な情報量が抑えられたまま、確かな“強度”だけが残る。


シルエットは肩傾斜が自然で、腕にかけて軽くテーパード。
動いたときに布の重心が揺れず、都市生活の歩行や携帯物の出し入れにストレスを感じないよう、細部まで計算されています。

クラシックなハンティングコートを下敷きにしつつ、分量を削ぎ、厚みを減らし、都市の気候と動作に合わせて“再翻訳”したような佇まいです。



特筆すべきは、レザーの重さと生地の軽さの調和です。
レザーが上部の内部に集中することで、外見は軽く見えても、身体を包むときだけ芯のある安定感が生まれる。

この“視覚と体感のギャップ”こそがOña Selfa期のLOEWEが生み出した独自性であり、他のラグジュアリーブランドにはない仕上げ方といえます。

このコートが放つ魅力は、大げさな意匠に頼らず、正しい素材と正しい構造だけで完成している点にあります。

削ぎ落としているのに、物足りなさが出ない。
ミニマルなのに、確かな格が宿る。
過剰を避けながら無骨にも寄らず、そのどちらにも傾かない絶妙な均衡。

そのバランスは、レザーの家としての技術と、スペインのクラフツマンシップ、そして2000年代前半のヨーロッパモードの緊張感が合わさって初めて成立します。


年月が経っても魅力が損なわれないのは、トレンドではなく“構造美”で勝負しているから。
LOEWEがモードの只中で静かに格を示していた時代の、非常に貴重なアーカイブです。


Measurement : サイズ情報

Size：XL　[表記]　(日本サイズ XL相当)
平置き採寸 : 着丈 115cm 身幅 60cm 肩幅 49cm 袖丈 66cm

Condition：商品状態

着用感や目立ったダメージのないミントコンディション。

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