Band : PRADA
Material : Nylon 50%/Polyester 50%
Color : Gray
Size: 54R
Model：175cm 65kg




2000年代のPRADAが何をめざしていたのか。
このジャケットを手に取ると、その答えがじわじわと見えてきます。

2007SS。
ミウッチャ・プラダが「クラシックのかたちを借りながら、機能性と知性のあいだをどう揺らがせるか」を徹底して突き詰めたシーズンです。
“real clothes” “utilitarian elegance” といった言葉が、当時のレビューの中心に置かれたのも象徴的でした。

表向きはミニマルで、抑制が効いている。
しかし内部は、軽さや動きの滑らかさを考え抜いた構造で組まれている。
その二面性を象徴するのが、このテック・テーラードジャケットです。



素材はポリエステル50%、ナイロン50%。
一見するとマットな軽量タフタですが、触れてみると“戻りの遅い張り感”があり、皺の表情がそのままデザインとして生きてくる。
動くたびに生地が微かに揺れ、光をぼそっと散らすことで、ウールでもコットンでも出せない、独特の陰影が現れます。

形としては、非常にミニマルな三つボタンのテーラード。
けれど、これはアンコンではありません。

肩には薄く構築が残され、袖山にもわずかな立ち上がりがある。
胸〜前身頃にはごく薄い補強が入り、軽い素材でありながら、ジャケットとしての“線”が崩れない。
このバランスこそ、2007SSのPRADAが一番こだわっていた部分です。

「軽さ」と「構築」の両立。
「日常」と「テーラード」の架け橋。
その間にある緊張や揺らぎを、そのまま服の表情として扱う。
ミウッチャが当時インタビューで語った「男性服に曖昧さを与えたい」という思想が、まさに布とシルエットの両方で具体化された一着です。

袖を通すと、この思想はさらに明確になります。
軽いのに、身体に“形”が乗る。
テック素材なのに、きちんとした場面でも通用する整った佇まい。
それでいて、深く座り込んだり、ラフに腕を上げ下げするたびに、皺が生地にうっすら刻まれ、服がその人の動きにゆっくりと馴染んでいく。

スーツを「固いもの」として扱うのではなく、
“生活の中で動くためのツール” として書き換える。
これはPRADAにしかできない芸当です。


2007SS は、のちの 2009SS・2010SS へと続く“テック × テーラード”の前夜。
その中でも本作は、素材・構造・哲学すべてが高いレベルでまとまったアーカイブです。

控えめなグレイッシュトーンは、どんな光でも表情を変え、
三つボタンの削ぎ落とされたフロントは、装飾に頼らず、線の美しさだけで存在感を放つ。

テック素材の軽さに、テーラリングの緊張を混ぜる。
その矛盾を成立させたミウッチャの感性は、2020年代のテック・ファッション隆盛を先取りしていたと言っても過言ではありません。

“軽いけれど、ラフではない。”
“新しいけれど、過剰ではない。”
その微妙なバランスを、最高の精度で形にしたジャケットです。

PRADAの2000年代アーカイブの中でも、
「哲学・実験・着実な美しさ」が三位一体になった希少な一着。
日常の動きにしなやかに寄り添いながら、エレガンスの輪郭はぼやけない。

軽く羽織るだけで、“2007年のミウッチャの思想”がそのまま身体に宿る。
そんな特別な服です。


Measurement : サイズ情報

表記: 54R（日本メンズサイズ L-XL相当）
平置き採寸 : 肩幅 50cm 身幅 57cm 袖丈 63cm 着丈 72cm

Condition :商品状態

光の当たり方によってボディのフェード感が多少見られます。
写真にてご確認ください。

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