Brand : HIMA SPORT
Material : Nylon 100%
Size : 1/2 P
Color : Blue/Red
Model : 175cm 65kg


60〜70年代のフランスには、今では考えられないほど苛烈な山岳文化が存在していました。
アルプスの北壁が次々と切り拓かれ、若いクライマーたちが“死の壁”と呼ばれた斜面に挑み続けていた時代です。


その中心にいたのが、フランス登山界の象徴 René Desmaison という人物でした。
同時に、そんな彼らを支えていたのが、フランス国内で生まれた本気の山岳ギアたちです。
いま残された資料は少ないものの、HIMASPORT も確かにその文脈の中に存在していました。

HIMASPORT はブランド史がほぼ残っていません。
創業年や関係企業も不明で、どこで誰が作っていたのかという情報も抜け落ちたままです。
ただし当時の広告類には「高所登山のスペシャリスト」という言葉が記され、寝袋や防水ギア、アルピニズム向けのテントまで製造していたことが確認できます。
つまり、街用ではなく、極限の現場で使われることを前提にしたメーカーだったということです。



現地フランスの山岳フォーラムでは、ひとつの証言が長く語り継がれています。
「デマゾンが青い高所用ダウンを着ていた。それは Millet ではなく Himasport だった。」
写真資料が残っていないため断定はできませんが、複数の投稿者が同じ話をしていることから、当時の山岳コミュニティが Himasport を“本気のギア”として認識していたのは確かです。
ブランド史が失われているからこそ、こうした生の証言は非常に貴重です。





今回の個体も、まさにその文脈の延長線にある一着です。
強い光沢を持つフランス製ナイロンタフタ、太いバッフル、救助活動の視認性を高める鮮やかな青×赤のカラーリング。
60〜70年代のフランス製ダウンに特有の造形がそのまま残っています。
現代のような軽量化や合理化とは対極の“生存のための設計”です。



最も驚かされるのは、ダウンの量です。
フードの先端に至るまでパンパンに詰まり、半世紀以上が経ったとは思えないほど膨らみを維持しています。
当時のフランス製ダウンは、使われ方も保管環境も厳しく、コンディションが残りにくいのが常。
ここまでの状態で残っている個体は、本当に稀です。



内側のタグには「Alpinisme」「Made in France」「Marque Déposée」といった当時の山岳用語が並びます。
このタグのタイポグラフィと構成は、60〜70年代フランス山岳ギアの典型。
ブランドの消失とともに資料がほとんど残っていないからこそ、タグそのものが歴史資料としての価値を持ちます。





街で着れば圧倒的な存在感があります。
理由は明確で、これはファッション用ではなく“命を守るための構造”がそのまま表に出ているからです。
大きな空気層、重さと量感、丸みを帯びたフォルム。
人間の体温を逃さないためだけに作られた設計が、結果として強烈な佇まいを生み出しています。



半世紀以上前の空気を閉じ込めたまま、時代が上書きされずにここまで残るダウンはほとんどありません。
HIMASPORT はブランド史が霧のように消えてしまったメーカーですが、その分、現物そのものが語る情報量が圧倒的です。
この青いダウンには、60〜70年代フランスの山岳文化、当時の職人たちの価値観、そして高所登山という極限環境の緊張感までもが染み込んでいます。



現代では絶対に再現できない“重量感と迫力”。
フランス山岳ギアの黄金期を象徴する、ほぼ奇跡的なコンディションの一着です。



Measurement : サイズ情報

表記： 1/2 P (日本メンズサイズ L相当）
平置き採寸 : 身幅 63cm 肩幅 50cm 着丈 76cm 袖丈 64cm

Condition :商品状態
ミントコンディション
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