Brand : PRADA SPORT
Material : Nylon/Fleece
Color : Purple/Black


1997年に始動したPRADA SPORT（Linea Rossa）は、当初こそセーリングや登山、ミリタリーといった具体的なフィールドを参照していましたが、2000年代に入るとその役割を大きく変えていきます。

特に2003年以降、ミウッチャ・プラダは「スポーツウェア」という言葉そのものから距離を取り、都市生活を前提とした機能の再定義へと舵を切りました。



この時代のPRADA SPORTにおいて重要だったのは、
どんな競技のための服か、ではありません。
どんな環境で、どんな行動をする人間のための道具か、という視点でした。



都市は寒暖差があり、人が多く、移動距離が長く、荷物も多い。
ミウッチャは一次資料の中で、都市そのものを「十分に過酷な環境」と捉えています。
だからこそ、本来はアウトドアやスポーツのために開発された素材や構造は、都市生活においても極めて合理的である。
PRADA SPORTは、その合理性だけを抽出し、装飾性や競技性を削ぎ落とすことで成立していました。





中綿を含んだパデッド構造により、軽量でありながら確かな保温性を確保。
一方で、形状は極めて単純で、巻き方や使い方を限定しません。
肩に掛けることも、首に巻くことも、畳んで持つことも、あるいは室内で膝掛けとして使うこともできる。
どの使い方が正しいかは、プロダクト側からは提示されていません。


これは設計の放棄ではなく、設計思想の結果です。
ミウッチャ・プラダはこの時代、服を「完成品」として提示することに強い関心を持っていませんでした。
服は、着用者の行動によって初めて完成するもの。
その考え方が、ジャケットやパンツ以上に、ストールやブランケットといった可変的なアイテムに色濃く表れています。



赤いPRADAのレザーパッチは、Linea Rossaを象徴する要素ですが、ここでは装飾ではありません。
視認性と識別性のための最小限のサインとして機能しています。
主張ではなく、役割として存在している点も、この時代のPRADA SPORTらしい部分です。


性別について語る必要がないのも、このプロダクトの特徴です。
着用する身体を想定しすぎていないからこそ、スタイリングの自由度が高い。
肩に掛けても、手で持っても成立するのは、用途よりも行動を優先して設計されているためです。


2000年代中盤のPRADA SPORTは、
スポーツウェアでも、ラグジュアリーアクセサリーでもありません。
都市生活における機能を、どこまで抽象化できるかを真剣に考えていた、非常に知的な実験の場でした。

このストールは、その実験がもっとも洗練された形で現れたプロダクトのひとつです。
着るためではなく、使うためのPRADA。
Linea Rossaというラインが到達した、ひとつの完成形と言える存在です。


Measurement :サイズ情報

採寸 : 全長 111cm 横幅 29cm

Condition：商品状態

目立ったダメージのないグッドコンディション。

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