Brand : PRADA
Material : Nylon/Knit(Unknown material)
Color : Dark Olive/Olive


2000年代前半のPRADA SPORT（Linea Rossa）は、
スポーツウェアでも、ファッションアクセサリーでもない領域を明確に志向していました。
それは「都市生活を前提とした機能の再設計」です。


ミウッチャ・プラダは、一次資料やインタビューの中で繰り返し、
都市を「すでに十分に過酷な環境」と捉えています。
寒暖差、人の密度、移動距離、摩擦、スピード。
それらはアウトドアと同様に、あるいはそれ以上に身体へ負荷を与える要素です。


このマフラーは、そうした都市環境への応答として生まれたプロダクトです。

まず形状について。
本作は、誰もが見慣れた細長い長方形、いわゆる一般的なマフラーと同一の形をしています。
特異なカッティングや、用途を限定する立体構造は採用されていません。
首に巻く、垂らす、肩に掛ける。
そのすべてが前提として成立する、ごくオーソドックスなフォルムです。

しかし、このプロダクトの本質は形状にはありません。



片面には高密度ナイロン素材、もう片面にはローゲージ寄りのニット。
この二層構造は、装飾的なリバーシブルではなく、
役割を明確に分けた機能配置として設計されています。

ナイロン面は、風や外気、摩耗といった外部環境を受け止めるための層。
一方でニット面は、体温を保持し、肌との接地に適した内側の層です。
どちらを外に出すかによって、マフラーの性格は自然に変化します。

重要なのは、
「どちらが正しい使い方か」をプロダクト側が指示していないこと。

この時代のPRADA SPORTは、
着用者の行動や判断によって完成する服を意識的に作っていました。
形をデザインするのではなく、
環境と身体の関係性を設計する。
その思想が、このマフラーにもはっきりと表れています。

赤いLinea Rossaのタグも、ここでは象徴的な意味合いに留まりません。
視認性と識別性を担うためのサインであり、
装飾として前に出ることを目的としていない配置です。
2000年代前半のPRADA SPORTに共通する、
「機能が結果として美しさを帯びる」構造がここにもあります。

このプロダクトは、
ラグジュアリーな防寒具でも、
ストリート的なアクセサリーでもありません。

日用品として定着したマフラーという形式を、
別の思考で再構築した結果として存在しています。

形は普通。
しかし、考え方は極めて異質。

それこそが、
PRADA SPORTが最も鋭く、最も知的だった2000年代前半の魅力であり、
このマフラーが今見ても説得力を失わない理由です。


Measurement :サイズ情報

採寸 : 全長 123cm 横幅 32cm

Condition：商品状態

目立ったダメージのないグッドコンディション。
タグのスレがございます。

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