Brand : "Gianfranco Ferré"
Color : BLACK
Material : Leather 100%
Size : S [表記]
Model : 175cm 60kg

Gianfranco Ferréというデザイナーを語るうえで、欠かすことのできない要素があります。
それは、“造形への異常なまでの執着”です。

Ferréは建築学を学んだのち、インドでのテキスタイル研究、オートクチュールでの実験を経て、イタリアンモードの中心へと歩みを進めました。
彼の服は、布を彫刻として扱う姿勢に貫かれています。線の角度、光の反射、分量のバランス。そのひとつひとつが明確な意図で統制され、素材は“形を作るための道具”として選ばれます。

レザーであっても、その思想は変わりません。

本作に使われているのは、きめ細かなスエードレザーをベースに、表面へコーティングを施した素材です。
このコーティングは光沢を目的としたものではなく、スエードの起毛粒子と光の反射角度をあえて操作するための処理です。
光が当たると粒子が細かく輝き、暗部では深く沈む。
陰影のコントラストが大きく変化し、着用する人間の動きを拾い、揺らぎ続けます。

この“光の動き”を服の一部として成立させる発想こそ、Ferréらしさの象徴です。


前身頃、袖、サイドと、各所に張り巡らされたポケットは、ジップ付き、フラップ付き、プリーツ入りと変化に富み、視覚的なアクセントでありながらも機能性を兼ね備えています。こうした“ギミック”に心をくすぐられるのは、少年の頃に秘密基地を作っていた感覚に近いのかもしれません。

さらに、印象的なのが、ウエスト内側に備えられた赤いドローコードと金属製パーツ。全体を静かに統制する無彩色のトーンの中に、一点だけ差し込まれた鮮烈な赤。それはまるで、構築の中にひそむ遊び心や、ミニマリズムに抗う意志のようにも映ります。

素材は100%コットンながら、わずかに光を帯びる滑らかな質感。ミリタリー由来のタフな意匠と、イタリアンメゾンらしい上品な仕立てのバランスが絶妙で、日常着としての親和性も高く、カジュアルからモードなスタイルまで幅広く溶け込みます。


シルエットはカーコート型を基調としながら、一般的なワーク由来のシェイプとは異なり、建築的なバランスで構築されています。
肩線はほんのわずかに前へ振られ、袖はアームホールから自然に落ちるよう角度が調整されています。
身体のラインを追いすぎず、それでいて無機質にならない。
Ferréが得意とする“立体の中にある気流”のような、空気を含むフォルムです。


また、サイドにはアジャスト可能なバックルストラップが配置されています。
金具ひとつにも重量と質感のバランスが取られ、装飾に頼らず、構造としての存在感をもたせています。
たとえばバックルの位置は、視覚的な重心と体幹のバランスを意識した高さに設定され、後ろ姿でもシルエットを引き締める役割を果たしています。



そして、前立てに採用されているのが Lampo製の6番ジップ。
Lampoは80〜90年代のイタリアンモードを象徴する存在で、
Ferré、Armani、Versace、Dolce & Gabbanaなどが愛用した金属ジップ。

#6はコートに用いられることの多い太さで、滑らかな可動と、金属としての存在感のバランスが秀逸です。
本作のような直線基調のレザーに合わせると、前立ての“線”が美しく強調され、Ferréの建築的デザインに極めて自然にフィットします。



裏側はスエードの素地がそのまま活きており、無加工の質感が肌との間に心地よいグリップをもたらします。
この表と裏の質感差もまた、Ferréの素材観を象徴しています。
外側は構築的でありながら、内側にはレザーそのものの柔らかさが宿る。
単なるレザーコートでは味わえない、素材の両面性が共存しています。





着用すると、まず最初に出会うのは“軽さ”です。
視覚的には重厚に見える素材ですが、過度な厚みを排した一枚仕立てに近い構造で、スエード特有の柔軟さがそのまま身体へ馴染みます。
Ferréが好んだ“着られる彫刻”という言葉が、そのまま体感できるような感覚です。



90年代末〜2000年代初頭のFerréは、ミニマリズムとも違い、装飾的モードとも距離を置き、素材そのものを立体として扱うアプローチを深化させていました。
本作は、その思想が最も成熟していた時期の空気をまとうプロダクトです。
力のある素材を用いながら、過剰なデザインには逃げず、構造だけで存在感を獲得する。
イタリアンモードの歴史の中でも、唯一無二の位置に立つレザープロダクトだと感じます。



カーコートという普遍的なフォーマットの中に、Ferréの手の跡が鮮烈に残っています。
ミニマルに見えて奥行きがあり、着込むほどに光と影の表情が変わる。
素材の“彫刻性”を堪能できる一着です。


Gianfranco Ferréの中でも、レザーにここまで強い表情を持たせた個体は多くありません。
ブランドの歴史・思想・造形美が、ひとつのレザープロダクトとして結晶したような存在です。


ワードローブに置くことで、服という概念そのものの奥行きを広げてくれる一着だと思います。


Measurements：サイズ情報

表記: S（日本メンズサイズM相当）
平置き寸法 : 身幅 53cm 肩幅 46cm 着丈 74cm 袖丈 61cm

Condition：商品状態

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