[1988-1992] “HERMÈS HOMME” Wool Plaid Work Jacket (Made in France / Designed under Véronique Nichanian)
Brand : Hermès
Material : Wool 100%
Color : Blue,Yellow,Green
Size : 52
Model:175cm 65kg
1988年、当時の会長ジャン=ルイ・デュマに見出され、ヴェロニク・ニシャニアンがエルメスのメンズウェアを率いることになった瞬間から、HERMÈS HOMMEの服作りは大きく舵を切りました。
それは、男性像を誇張することでも、分かりやすいラグジュアリーを誇示することでもありませんでした。
彼女が真摯に向き合っていたのは、「すでに完成されすぎているエルメスの価値を、どうやって人間の“日常”へ取り戻すか」という、極めて現実的で、しかしファッションにおいて最も難しい問いでした。
今回ご紹介するワークジャケットは、その問いに対する、非常に誠実な答えのひとつであり、彼女のキャリア初期における思想が最も純粋な形で結晶化した、歴史的な一着です。
ベースになっているのは、いわゆるカバーオール型のワークジャケットです。
直線的な身頃、過剰なシェイプを持たないボックスシルエット、そして機能を優先して配置された3つのパッチポケット。
もともとは労働のために生まれた、「美しさを目的としない服」の完成形です。
だからこそ、この型をラグジュアリーメゾンが扱うのは危険なのです。
少しでも装飾に寄れば嘘になりますし、少しでもデザインを足せば野暮になる。
ワークジャケットは、素材と仕立ての質がそのまま露呈してしまう、誤魔化しの効かない器でもあります。
しかし、当時のエルメスは、そこから逃げませんでした。
あえてこの「逃げ場のない型」を選び、真正面から素材と仕立てだけで勝負に出たのです。
まず視線を奪うのが、深みのあるイエロー、スモーキーなブルー、そして落ち着いたオリーブが交差するチェック柄です。
一見すると英国のカントリーサイドを思わせるクラシックなウールチェックですが、実際に手に取るとその印象は変わります。
表地はウール100%。
起毛感はありながらも、過度に甘くなく、空気を含みつつもだらしなく崩れない、しっかりとした密度があります。
これはシャツではなく、明確に「アウター」として成立させるための設計です。
チェックという強い視覚要素を使いながら、決して派手さではなく、色彩の奥行きで見せる。
ここに、当時のエルメスらしい「抑制」の美学がはっきりと表れています。
そして、このジャケットが「初期思想の証拠」である最大の理由が、その仕立ての異常なまでの精緻さにあります。
フロントのポケット部分にご注目ください。
身頃のチェック柄と、その上に縫い付けられたポケットのチェック柄が、縦のラインだけでなく横のラインに至るまで、寸分の狂いもなく完全に一致しています。
まるでそこにポケットなど存在しないかのように、柄が景色として繋がっているのです。
一般的な服作りにおいて、ここまで柄を合わせることは非効率の極みです。
しかし、彼女にとってそれは技術の誇示ではありませんでした。
ポケットを目立たせないこと。
服のノイズを消すこと。
そうすることで、服が主張するのを止め、着る人の個性を前に出すための、極めて思想的な選択だったのです。
「デザインは引くほど強くなる」。
彼女のその信念が、このポケット一つに宿っています。
裏地にはアセテートを使用しています。
これはキュプラが主流化する以前、80年代後半から90年代初頭のインポートウェアに見られる時代特有の仕様ですが、この選択もまた、派手さとは無縁です。
滑りを良くし、着脱を快適にし、ウールの表情を邪魔しない。
贅沢さは、あくまで機能のために使われています。
フロントのボタンも、セリエボタンのような象徴性を持たない、ブランド刻印入りの樹脂ボタンです。
目立たせるためのパーツではなく、毎日触れることを前提にしたパーツ。
「使われることを前提にした贅沢」が、こうした細部に徹底されています。
シルエットは、決して細くはありません。
身体を締め付けず、中に着込む余地を残したバランス。
しかし、だらしなくも見えない。
それは、パターンの精度と素材の適度な重さが、自然と美しい輪郭を作っているからです。
着たときに主張するのは、デザインではなく、服としての圧倒的な「落ち着き」です。
このジャケットが特別なのは、ワークウェアでありながら、「ワーク」を語ろうとしない点にあります。
労働の歴史も、機能の由来も、もちろん背景にはあります。
けれど、それを前面に押し出しません。
都市の中で、日常の速度で、静かに着られる服として完結しています。
それは、エルメスがメンズウェアにおいて、「強さ」や「男らしさ」をわざわざ語る必要がないと、この時点ですでに理解していた証でもあります。
一目で年代が分からず、流行の匂いもしない。
この驚くべき「匿名性」こそが、ヴェロニク・ニシャニアンが目指したラグジュアリーの形でした。
服が人を定義するのではなく、服は生活の一部であるべきだ。
「語る服」から「生きる服」へ。
30年以上経った今でも、このジャケットが古びることなく、文脈なしで成立してしまうその静かな強度は、彼女の思想がいかに正しかったかを証明しています。
日常着として、これ以上誠実な服を見つけることは、現代では非常に困難でしょう。
Measurements:サイズ情報
表記 : 52(日本メンズサイズL-XL相当)
平置き採寸 : 肩幅 55cm 身幅 64cm 袖丈 64cm 着丈 83cm
Condition:商品状態
目立ったダメージのないグッドコンディションです。
Attention
・商品は一点物のVintageになる為、SOLDになった場合全く同じアイテムの再入荷はございません、予めご了承下さい。
・採寸方法により、若干の誤差がある場合がございます、予めご了承下さい。
・Vintage商品の為、使用感や経年劣化がある場合がございます。
ご購入後の返品・交換は受け付けておりませんのでVintage商品にご理解のある方のみご購入をお願い致します。
・商品の色味は出来る限り肉眼で見た場合に近いよう調整しておりますが、お手元のブラウザによって見え方が変わることがあります。
他にも商品に関するご質問があれば、お気軽にお問い合わせ下さい。
Brand : Hermès
Material : Wool 100%
Color : Blue,Yellow,Green
Size : 52
Model:175cm 65kg
1988年、当時の会長ジャン=ルイ・デュマに見出され、ヴェロニク・ニシャニアンがエルメスのメンズウェアを率いることになった瞬間から、HERMÈS HOMMEの服作りは大きく舵を切りました。
それは、男性像を誇張することでも、分かりやすいラグジュアリーを誇示することでもありませんでした。
彼女が真摯に向き合っていたのは、「すでに完成されすぎているエルメスの価値を、どうやって人間の“日常”へ取り戻すか」という、極めて現実的で、しかしファッションにおいて最も難しい問いでした。
今回ご紹介するワークジャケットは、その問いに対する、非常に誠実な答えのひとつであり、彼女のキャリア初期における思想が最も純粋な形で結晶化した、歴史的な一着です。
ベースになっているのは、いわゆるカバーオール型のワークジャケットです。
直線的な身頃、過剰なシェイプを持たないボックスシルエット、そして機能を優先して配置された3つのパッチポケット。
もともとは労働のために生まれた、「美しさを目的としない服」の完成形です。
だからこそ、この型をラグジュアリーメゾンが扱うのは危険なのです。
少しでも装飾に寄れば嘘になりますし、少しでもデザインを足せば野暮になる。
ワークジャケットは、素材と仕立ての質がそのまま露呈してしまう、誤魔化しの効かない器でもあります。
しかし、当時のエルメスは、そこから逃げませんでした。
あえてこの「逃げ場のない型」を選び、真正面から素材と仕立てだけで勝負に出たのです。
まず視線を奪うのが、深みのあるイエロー、スモーキーなブルー、そして落ち着いたオリーブが交差するチェック柄です。
一見すると英国のカントリーサイドを思わせるクラシックなウールチェックですが、実際に手に取るとその印象は変わります。
表地はウール100%。
起毛感はありながらも、過度に甘くなく、空気を含みつつもだらしなく崩れない、しっかりとした密度があります。
これはシャツではなく、明確に「アウター」として成立させるための設計です。
チェックという強い視覚要素を使いながら、決して派手さではなく、色彩の奥行きで見せる。
ここに、当時のエルメスらしい「抑制」の美学がはっきりと表れています。
そして、このジャケットが「初期思想の証拠」である最大の理由が、その仕立ての異常なまでの精緻さにあります。
フロントのポケット部分にご注目ください。
身頃のチェック柄と、その上に縫い付けられたポケットのチェック柄が、縦のラインだけでなく横のラインに至るまで、寸分の狂いもなく完全に一致しています。
まるでそこにポケットなど存在しないかのように、柄が景色として繋がっているのです。
一般的な服作りにおいて、ここまで柄を合わせることは非効率の極みです。
しかし、彼女にとってそれは技術の誇示ではありませんでした。
ポケットを目立たせないこと。
服のノイズを消すこと。
そうすることで、服が主張するのを止め、着る人の個性を前に出すための、極めて思想的な選択だったのです。
「デザインは引くほど強くなる」。
彼女のその信念が、このポケット一つに宿っています。
裏地にはアセテートを使用しています。
これはキュプラが主流化する以前、80年代後半から90年代初頭のインポートウェアに見られる時代特有の仕様ですが、この選択もまた、派手さとは無縁です。
滑りを良くし、着脱を快適にし、ウールの表情を邪魔しない。
贅沢さは、あくまで機能のために使われています。
フロントのボタンも、セリエボタンのような象徴性を持たない、ブランド刻印入りの樹脂ボタンです。
目立たせるためのパーツではなく、毎日触れることを前提にしたパーツ。
「使われることを前提にした贅沢」が、こうした細部に徹底されています。
シルエットは、決して細くはありません。
身体を締め付けず、中に着込む余地を残したバランス。
しかし、だらしなくも見えない。
それは、パターンの精度と素材の適度な重さが、自然と美しい輪郭を作っているからです。
着たときに主張するのは、デザインではなく、服としての圧倒的な「落ち着き」です。
このジャケットが特別なのは、ワークウェアでありながら、「ワーク」を語ろうとしない点にあります。
労働の歴史も、機能の由来も、もちろん背景にはあります。
けれど、それを前面に押し出しません。
都市の中で、日常の速度で、静かに着られる服として完結しています。
それは、エルメスがメンズウェアにおいて、「強さ」や「男らしさ」をわざわざ語る必要がないと、この時点ですでに理解していた証でもあります。
一目で年代が分からず、流行の匂いもしない。
この驚くべき「匿名性」こそが、ヴェロニク・ニシャニアンが目指したラグジュアリーの形でした。
服が人を定義するのではなく、服は生活の一部であるべきだ。
「語る服」から「生きる服」へ。
30年以上経った今でも、このジャケットが古びることなく、文脈なしで成立してしまうその静かな強度は、彼女の思想がいかに正しかったかを証明しています。
日常着として、これ以上誠実な服を見つけることは、現代では非常に困難でしょう。
Measurements:サイズ情報
表記 : 52(日本メンズサイズL-XL相当)
平置き採寸 : 肩幅 55cm 身幅 64cm 袖丈 64cm 着丈 83cm
Condition:商品状態
目立ったダメージのないグッドコンディションです。
Attention
・商品は一点物のVintageになる為、SOLDになった場合全く同じアイテムの再入荷はございません、予めご了承下さい。
・採寸方法により、若干の誤差がある場合がございます、予めご了承下さい。
・Vintage商品の為、使用感や経年劣化がある場合がございます。
ご購入後の返品・交換は受け付けておりませんのでVintage商品にご理解のある方のみご購入をお願い致します。
・商品の色味は出来る限り肉眼で見た場合に近いよう調整しておりますが、お手元のブラウザによって見え方が変わることがあります。
他にも商品に関するご質問があれば、お気軽にお問い合わせ下さい。
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