[Early 00's] "HUGO BOSS" Black Shearling Long Coat
¥132,000 ($836.25)
Brand : HUGO BOSS
Material : Shearling 100%
Color : Black
Size : Unknown
Model : 172cm 55kg
ムートンをミニマルに仕立てるというのは、考えてみれば少し矛盾した行為なのかもしれません。
一枚の羊皮にレザーと毛足を併せ持ち、厚みも重量も、触れた瞬間に分かるほどの豊かさもある。
ムートンとは元来、それ自体が雄弁な素材です。
フライトジャケットであればその量感を機能として見せ、ラグジュアリーなコートであれば大きな襟やベルト、トリミングによって毛皮の存在感をさらに引き出す。
素材が強いからこそ、その強さを意匠へ転換する方法が長く選ばれてきました。
今回ご紹介するBOSSの一着は、そこから少し離れた場所にあります。
使用されているのは、表面を深いブラックに仕上げた非常に上質なシアリング。
細かな粒面には均一な黒では終わらない濃淡が残り、光を受けても強く艶めくというより、場所によって鈍く反射しながら革の起伏を浮かび上がらせます。
その裏側にはダークブラウンを帯びた密度の高い毛足が広がり、表側の乾いたブラックとは全く異なる豊かさを持っている。
これほど存在感のある素材に対して、デザインは驚くほど簡潔です。
ミニマルなボタンフライ、小振りなノッチドラペル、長いストレートシルエット。
腰を絞るベルトも、肩を飾るエポレットも、ムートンの毛足を外側へ大きく見せるトリミングもありません。
どこか、ムートンコートから“ムートンらしさ”だけを取り除いていったような設計です。
それでも無機質にならないのは、削った先に残されているものが単なる平面ではなく、天然皮革そのものだからでしょう。
JIL SANDERやHELMUT LANGに代表される90年代以降のミニマリズムには、装飾を減らすことで素材やプロポーションそのものをデザインとして見せる感覚がありました。
このコートにもそれと通じるモダンな佇まいがありますが、BOSSの場合、その出発点はもう少しクラシックです。
ブランドの根幹にあるのは、長く培ってきたメンズテーラリング。
HUGO BOSSは1960年代に既製スーツの生産を本格化させ、70年代初頭にはBOSSを高品質なメンズコレクションとして展開。
2000年代に入ってからも、そのクラシックで端正なBOSSと、より前衛性を担うHUGOを異なる性格として展開していました。
だからこのコートも、モードブランドがムートンを削ぎ落として抽象化したものとは少し違う。
まず一着の正統なメンズコートがあり、その構造を崩さず、ファブリックだけを極上のムートンへ置き換えたような感覚。
襟はレザージャケットのように大きく開かず、身体との釣り合いを考えた比較的小振りな設計。
そこから続くラペルも、厚いムートンを折り返しているにもかかわらず輪郭はすっきりと収まり、フロントにはボタンが一定の間隔で並ぶ。
つまり、目に入る情報のほとんどがコートとしてごく普通なのです。
しかし、この「普通」をムートンで成立させることが難しい。
毛足を伴う厚い羊皮は、布帛のように簡単には折れず、襟やラペル、前端を作れば必然的に厚みが現れます。
そこを過度に構築的な造形へ向かわせず、シングルコートの馴染み深い輪郭へ収めているからこそ、素材の迫力とデザインの抑制が拮抗しています。
そして正面から後ろへ回ると、その考え方はさらに明確になります。
肩は自然に落とされ、胸から裾へほとんど絞り込まずに長い垂直線を描く。
背面も中央のシームと腰付近を横切る接ぎ、センターベントという必要最小限の構成で、大きなブラックの面が残されています。
さらにに横から見た姿が美しい。
ムートンの厚みで身体を膨らませるのではなく、素材そのものの重量によって肩から裾までストンと落ちる。
テーラードコートほど身体を造形せず、オーバーコートほど大仰でもない、身体の周囲に一本の長い輪郭を引くようなシルエットです。
この直線性が、ムートン特有の豊かさをかなり都会的なものへ変えています。
そして外側をここまで抑えたことで、内側が初めて意味を持つ。
襟元から僅かに覗くダークブラウンの毛足。
前を開けば、ブラックのレザーから一転して柔らかなシアリングが身体を覆っていることが分かります。
表と裏に異なる素材を重ねたのではなく、同じ一枚の羊皮が、外では黒いレザーコートになり、内では毛皮になる。
ムートンという素材が本来持っている二面性を、余計な装飾を加えず、そのままデザインへ利用しているところがこの服の面白さでしょう。
表側では毛皮の存在をほとんど語らず、着る人だけが内側の豊かさを知っている。
ラグジュアリーを表へ展開するのではなく、構造の内側へ折り畳んでいるようです。
それは、華美な装飾よりカッティングとプロポーションによって男性像を作ってきたBOSSともよく馴染みます。
現在のBOSS自身もテーラリングをブランドの中核として位置付けていますが、その源流はこの時代以前から続くもの。
だからこそ、この一着を単純に「ミニマルなムートンコート」と括ってしまうには少し惜しい。
JIL SANDERのように素材を抽象的な面として扱う感覚とも、HELMUT LANGのように既存の衣服から意味を削り取っていくアプローチとも異なり、BOSSはあくまでメンズウェアとして馴染みのあるコートの文法を残したまま、素材だけを極端に贅沢なものへ置き換えている。
だから奇抜ではないのに、普通でもない。
情報を減らすことで無個性になるのではなく、何を残すかによってムートンそのものの存在を際立たせる。
2000年代初頭と見られるこの時代のBOSSらしい端正さと、極めて豊かな天然素材。
その二つが過不足なく重なったからこそ、二十年以上を経た現在では、むしろその簡潔さが一層モダンに映ります。
極上のブラックムートンを、あくまで一着の端正なロングコートとして着る。
その贅沢な距離感まで含めてお楽しみいただきたい一着でございます。
Measurements : サイズ情報
表記 : Unknown(日本メンズサイズXL相当)
平置き採寸 : 肩幅 54cm 身幅 64cm 着丈 104cm 袖丈 65cm
Condition :商品状態
ヴィンテージムートンならではの表情が出ておりますが、目立つダメージなどはないグッドコンディション。
Attention
・商品は一点物のVintageになる為、SOLDになった場合全く同じアイテムの再入荷はございません、予めご了承下さい。
・採寸方法により、若干の誤差がある場合がございます、予めご了承下さい。
・Vintage商品の為、使用感や経年劣化がある場合がございます。
ご購入後の返品・交換は受け付けておりませんのでVintage商品にご理解のある方のみご購入をお願い致します。
・商品の色味は出来る限り肉眼で見た場合に近いよう調整しておりますが、お手元のブラウザによって見え方が変わることがあります。
他にも商品に関するご質問があれば、お気軽にお問い合わせ下さい。
Brand : HUGO BOSS
Material : Shearling 100%
Color : Black
Size : Unknown
Model : 172cm 55kg
ムートンをミニマルに仕立てるというのは、考えてみれば少し矛盾した行為なのかもしれません。
一枚の羊皮にレザーと毛足を併せ持ち、厚みも重量も、触れた瞬間に分かるほどの豊かさもある。
ムートンとは元来、それ自体が雄弁な素材です。
フライトジャケットであればその量感を機能として見せ、ラグジュアリーなコートであれば大きな襟やベルト、トリミングによって毛皮の存在感をさらに引き出す。
素材が強いからこそ、その強さを意匠へ転換する方法が長く選ばれてきました。
今回ご紹介するBOSSの一着は、そこから少し離れた場所にあります。
使用されているのは、表面を深いブラックに仕上げた非常に上質なシアリング。
細かな粒面には均一な黒では終わらない濃淡が残り、光を受けても強く艶めくというより、場所によって鈍く反射しながら革の起伏を浮かび上がらせます。
その裏側にはダークブラウンを帯びた密度の高い毛足が広がり、表側の乾いたブラックとは全く異なる豊かさを持っている。
これほど存在感のある素材に対して、デザインは驚くほど簡潔です。
ミニマルなボタンフライ、小振りなノッチドラペル、長いストレートシルエット。
腰を絞るベルトも、肩を飾るエポレットも、ムートンの毛足を外側へ大きく見せるトリミングもありません。
どこか、ムートンコートから“ムートンらしさ”だけを取り除いていったような設計です。
それでも無機質にならないのは、削った先に残されているものが単なる平面ではなく、天然皮革そのものだからでしょう。
JIL SANDERやHELMUT LANGに代表される90年代以降のミニマリズムには、装飾を減らすことで素材やプロポーションそのものをデザインとして見せる感覚がありました。
このコートにもそれと通じるモダンな佇まいがありますが、BOSSの場合、その出発点はもう少しクラシックです。
ブランドの根幹にあるのは、長く培ってきたメンズテーラリング。
HUGO BOSSは1960年代に既製スーツの生産を本格化させ、70年代初頭にはBOSSを高品質なメンズコレクションとして展開。
2000年代に入ってからも、そのクラシックで端正なBOSSと、より前衛性を担うHUGOを異なる性格として展開していました。
だからこのコートも、モードブランドがムートンを削ぎ落として抽象化したものとは少し違う。
まず一着の正統なメンズコートがあり、その構造を崩さず、ファブリックだけを極上のムートンへ置き換えたような感覚。
襟はレザージャケットのように大きく開かず、身体との釣り合いを考えた比較的小振りな設計。
そこから続くラペルも、厚いムートンを折り返しているにもかかわらず輪郭はすっきりと収まり、フロントにはボタンが一定の間隔で並ぶ。
つまり、目に入る情報のほとんどがコートとしてごく普通なのです。
しかし、この「普通」をムートンで成立させることが難しい。
毛足を伴う厚い羊皮は、布帛のように簡単には折れず、襟やラペル、前端を作れば必然的に厚みが現れます。
そこを過度に構築的な造形へ向かわせず、シングルコートの馴染み深い輪郭へ収めているからこそ、素材の迫力とデザインの抑制が拮抗しています。
そして正面から後ろへ回ると、その考え方はさらに明確になります。
肩は自然に落とされ、胸から裾へほとんど絞り込まずに長い垂直線を描く。
背面も中央のシームと腰付近を横切る接ぎ、センターベントという必要最小限の構成で、大きなブラックの面が残されています。
さらにに横から見た姿が美しい。
ムートンの厚みで身体を膨らませるのではなく、素材そのものの重量によって肩から裾までストンと落ちる。
テーラードコートほど身体を造形せず、オーバーコートほど大仰でもない、身体の周囲に一本の長い輪郭を引くようなシルエットです。
この直線性が、ムートン特有の豊かさをかなり都会的なものへ変えています。
そして外側をここまで抑えたことで、内側が初めて意味を持つ。
襟元から僅かに覗くダークブラウンの毛足。
前を開けば、ブラックのレザーから一転して柔らかなシアリングが身体を覆っていることが分かります。
表と裏に異なる素材を重ねたのではなく、同じ一枚の羊皮が、外では黒いレザーコートになり、内では毛皮になる。
ムートンという素材が本来持っている二面性を、余計な装飾を加えず、そのままデザインへ利用しているところがこの服の面白さでしょう。
表側では毛皮の存在をほとんど語らず、着る人だけが内側の豊かさを知っている。
ラグジュアリーを表へ展開するのではなく、構造の内側へ折り畳んでいるようです。
それは、華美な装飾よりカッティングとプロポーションによって男性像を作ってきたBOSSともよく馴染みます。
現在のBOSS自身もテーラリングをブランドの中核として位置付けていますが、その源流はこの時代以前から続くもの。
だからこそ、この一着を単純に「ミニマルなムートンコート」と括ってしまうには少し惜しい。
JIL SANDERのように素材を抽象的な面として扱う感覚とも、HELMUT LANGのように既存の衣服から意味を削り取っていくアプローチとも異なり、BOSSはあくまでメンズウェアとして馴染みのあるコートの文法を残したまま、素材だけを極端に贅沢なものへ置き換えている。
だから奇抜ではないのに、普通でもない。
情報を減らすことで無個性になるのではなく、何を残すかによってムートンそのものの存在を際立たせる。
2000年代初頭と見られるこの時代のBOSSらしい端正さと、極めて豊かな天然素材。
その二つが過不足なく重なったからこそ、二十年以上を経た現在では、むしろその簡潔さが一層モダンに映ります。
極上のブラックムートンを、あくまで一着の端正なロングコートとして着る。
その贅沢な距離感まで含めてお楽しみいただきたい一着でございます。
Measurements : サイズ情報
表記 : Unknown(日本メンズサイズXL相当)
平置き採寸 : 肩幅 54cm 身幅 64cm 着丈 104cm 袖丈 65cm
Condition :商品状態
ヴィンテージムートンならではの表情が出ておりますが、目立つダメージなどはないグッドコンディション。
Attention
・商品は一点物のVintageになる為、SOLDになった場合全く同じアイテムの再入荷はございません、予めご了承下さい。
・採寸方法により、若干の誤差がある場合がございます、予めご了承下さい。
・Vintage商品の為、使用感や経年劣化がある場合がございます。
ご購入後の返品・交換は受け付けておりませんのでVintage商品にご理解のある方のみご購入をお願い致します。
・商品の色味は出来る限り肉眼で見た場合に近いよう調整しておりますが、お手元のブラウザによって見え方が変わることがあります。
他にも商品に関するご質問があれば、お気軽にお問い合わせ下さい。
