Brand : ARNYS PARIS
Material : Linen


伝説のブランドとも称される、“ARNYS（アルニス）”。
1933年、ウクライナ系ユダヤ人ジャンケル・グランベールによってパリ・セーヌ川左岸のセーヴル通り14番地に創業されて以降、長きにわたりフランス紳士たちを魅了し続けてきた名門です。

エルメスが右岸の象徴とされるなら、アルニスはまさに“左岸のエルメス”。
上質な素材使い、知性ある色彩設計、そしてクラシックを遊ぶ大胆さ──
そんな“ムッシュの遊び心”を体現してきた、唯一無二のメゾンです。



本作は、1990年代製のストライプリネン・ジャケット。

ぱっと見はクラシカルなテーラードジャケットですが、目を凝らすと随所にアルニスらしい意外性と構造的な美学が潜んでいます。

まず特筆すべきは、その襟元の造形。
1930年代のフレンチテーラリングを彷彿とさせるラウンドの裾、
しかしラペルは角の立った前衛的なラインを描き、クラシックとモダンが同居する独特なバランス感を生み出しています。

高度な立体構築をベースにした襟周りの仕立ては、本職のテーラーでも一目置く精緻な仕事。
「古い」ではなく、「重層的」な空気を纏ったディテールに、アルニスの美意識が宿ります。



そしてもう一つの見どころは、袖口のデザイン。

通常のジャケットに見られる本切羽でもなければ、シャツ袖でもない。
まるでミリタリーのカバーオールを思わせる仕様が採用されており、
構築されたテーラーリングに、あえてワークの要素を落とし込むという、遊び心と文化的解釈のミックスが感じられるアプローチです。

全てのボタンにはブランド刻印が施されており、こうした見えない部分にまで贅を尽くす姿勢にも、老舗メゾンとしての気品が漂います。



素材は、思わず“本当にリネンか？”と疑うほどに柔らかく、軽やかな極上のファブリック。
淡くグラデーションがかった知的でラグジュアリーなストライプパターンが、夏の光を受けて上品な陰影を生み出します。

リラクシーで品格を備えたフォルムは、着る者の個性を引き立てながら、どんな時代においても“逸品”として通用する格を感じさせてくれるはず。



2012年、“ARNYS” はLVMH傘下の “Berluti” に吸収され、ブランドとしては実質的に消滅。
その背景も含め、現在ではこうしたオリジナルのプロダクトは極めて入手困難な存在となっています。



モードでもなく、クラシックでもなく、アルニスという独立した思想の上で生まれたこのジャケット。
そこには、伝統と反骨、美意識と実用性、文化と洒脱が共存しています。

静かに語る力を持つ、本物の服。
今もなお、そんな言葉が似合う数少ないブランドが、ARNYSです。



Measurements：サイズ情報

表記：なし（日本メンズサイズM相当）
平置き採寸 : 肩幅 45cm 身幅 51cm 裾幅 57cm 袖丈 56.5cm 着丈 69cm

Condition：商品状態

年代物特有の着用感が認められます。

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