recollection vintage

2025/10/09 19:12


ジェンダーレス


って今でこそ当たり前のような考え方で、ただそれはかなり稀有な状態であると、ふと服飾史(を専門的に学んだことはございませんが)に関して振り返るとそう感じられます。

ポワレとシャネルによる女性の解放。

サンローランによるレディースにおけるパンツスタイルスーツ。

ゴルチエによるアンドロジナス。

ガリアーノによるメンズコルセット。

などなど。

ゴルチエ辺りからはかなり世界的にも浸透していたイメージはございますし、80年代後半からアメリカの大企業などをはじめ女性に対する雇用が積極的になりましたから当時からレディースのテーラードジャケットというものが多く流通するようになったのだと考えております。


互いの特権であったアイテムが着られるようになる、ということはファッションという分野において多様性をもたらし、男性女性双方にとっていい結果を生みました。

実際僕はサイズが適えばレディースアイテムだって着用いたしますしスタイルとしてフェミニンなものが好きだったりもします。

もちろん発祥である女性が着た方が綺麗に見えるレディースアイテムというものもございますが、そもそもそんなことを言い始めたら洋装そのものが日本人には向いていないということになりますので、ある程度の限度を持った上で着用できるレディースアイテムを選んでおります。


ブティックとしてドイツで生まれ、その後イタリアに拠点を移しコレクションブランドとして世界的に人気を得続けている"JIL SANDER"によるこちらのプロダクトは、先ほど触れた女性の為のテーラードジャケットとなります。

鉄の女と称されたジルが創設したブランドによる、レディーステーラードジャケット。

もうそれだけでかなり垂涎ものではありますね。


ただ便宜的にテーラードジャケットと申しましたが、こちらはコットンタイプライターによる軽快なシャツジャケットのようなものになります。

芯の入らないアンコンスタイルであり、フロントボタンはシャツのように小振りなもので、袖に関してはシャツのようなカフスに。胸ポケットもないですしね。

背中なんかヨーク付いてますから、バックスタイルはほぼシャツです。


特徴的なのはフロントは比翼仕様(ドレッシィ)になっているくせに腰ポケットはパッチ(スポーティ)、というある種の矛盾。

と言いましても恐らく比翼になっているのはJILらしいソリッド性の高さゆえでしょうからフォーマル性とは無縁なポジションなのでしょう。

でもそのおかげで良い違和感、良いむず痒さを覚えます。


フォーマルよりもややカジュアルやモードなスタイルがハマりそうですね。

しかし、メンズの特権であったテーラードジャケットも最早レディースファッションの定番と化して久しい昨今であれば、実に多岐にわたるスタイルにハマってくれるでしょう。

だからジャケットって好きなんですよね。