recollection vintage

2026/03/26 15:16


Q.ファッションを楽しむ上で欠かせないものとは何でしょう?

A.それは洋服です。

なんて出来の悪いナゾナゾみたいなものが脳裡に過ぎってしまったので思わずそんなスタートを切ってしまい、この下手くそなジャブにより皆様の出鼻を挫いていないと良いのですが、とこれまた訳の分からない懸念が生じております。


一世紀と半世紀ほど前より我が国日本にて普及した洋装なるものは、今やアタリマエの顔をして僕らに着られているわけでして、まあ僕も思い返せば和装なんて七五三だとか旅先くらいでするもので、頓珍漢さにより拍車が掛かっていた学生時代は周りから浮くが為にむしろ和服を着ていたくらいですから、今や大半の日本人にとって洋服が普通になっております。


バックリとカテゴライズするならば、アウター、インナー、ボトムス、に被り物やら掛け物やら履き物やら装飾品が加わりましてスタイリングの完成となるわけですね。言うまでもないですね。

そしてアウターとインナーは重ねる物、に対して、(よっぽどエッジィなスタイリングでない限り)ボトムスは単体で着用する物であります。これまた言うまでもないですね。

ということはつまり、ボトムスとは一枚のみでスタイリングの凡そ半分の割合を占める、ということなんです。再三申し訳ございませんが、言うまでもないですね。


皆様はお好きなボトムスってございますでしょうか?

まあね、一口にボトムスと言いましてもそのカテゴリに属するものなんて星の数よりあるんじゃないかってくらい無数にございますし、オールインワンはボトムスなのかみたいな予期せぬ論争も勃発してしまいそうですし、ああ、じゃあ質問を変えます。

皆様のお好きなボトムスのシルエットって何でしょうか?

これなら良いんじゃないですね。

ある程度選択肢が絞られ、それでいて各々がちゃんと好きなことを言える自由度もある。

これにしましょう。


皆様の素敵なご回答を待っている間に僕の好きなシルエットの話をば失礼します。


僕は昔っからワイドが好きです。


ワイドの中でもワイド・テーパードよりもワイド・ストレートが好きで、より好きなのはバギーですね。

裾幅が広い方が好きなんです。


その理由としては己の足首と足のそれぞれの大きさのバランスが気に入らない、という感覚的なものに起因しており、要は足を小さく見せたいんですよね。

そしてなんとかつての英国紳士達もそうだったようでして、ブリティッシュカルチャー大好きな僕としては、それを知った時嬉々としたのを覚えています。


さて、そんな英国の中でもオックスフォードという偉大なる大学がございますが、教育機関のくせして数多くのディティールやカルチャーを生み出したのは、やはり伝統ある同校であり、だからこそ由緒正しき洒落者が集まり、ゆえにある種ファッションリーダー的存在であったからでしょう。


オックスフォード・〇〇と名のつく物が多く存在するのはそれが理由ですね。






そんな同校にて、20年代の学生達を虜にしたニッカポッカ、を禁止した学校側、に反対して子供のような無茶苦茶な言い訳じみたものとして生まれたのがオックスフォード・バグスであり、その恰幅の良いボトムスが現代のバギーの源流でございます。

スウィンギング60'sの時もそうですけど、普段から抑圧的な風潮であるせいか、イギリスって反逆する時エグいですよね。とんでもなく素敵な爆発してくれますよね。


そしてそんなバギースタイルを色濃く受け継いだものがこちらのスラックスでございます。




ただしこちら、詳細不明です。

聞いたところによりますとサルト系のものらしく、内タグが一切ないのでビスポークによる物だとは思っておりましたので納得ではあるんですが、ジップがエクレア社のものでして、えぇ?じゃあおフランス?とどんどんと迷宮の中に入り込んでしまいますが、それもまた古着の楽しいところですし、イタリアにしろフランスにしろ、ブリティッシュスタイルであるバギーを取り入れるのは、天晴れ!拍手喝采!素晴らしき雑食性!となるのです。


肉厚でコシの強い生地によりドッシリと豊満さを残したまま落ちる裾幅は驚異の平置き34cmでございます。下手すりゃウエストですが、オックスフォードバグス全盛期ではこんなのが一般的だったようですね。

ベルトループは四つ。逆三角形のそれらは程よい意匠が感じられ、またそれらを含めたウエスマン周辺のステッチ達は、まあやっぱり綺麗なんです。

ステッチと言えばフライフロントのステッチも独特でえらく細いんですよね。これもまた珍しい。







そんなこんなで惚けて、そして呆けて眺めておりましたところ、ふと目をやった背面裏側。

よくよくそこを見てみて気付きましたのが、一度お直しをされているということ。

しかもまあ雑なんです。愛らしいんです。

恐らく仕立てたところとは違うところでやったんでしょうね。というかきっと、これをオーダーした人物と、今保有している僕らの間に少なくとももう1人いて、その全所有者様がお直しをされたんでしょう。

ゆえに腰裏のステッチは千鳥足のところもございますし、なぜか腰裏の布をカットしていないので重なってしまい不恰好に膨らみを持ってしまっているんです。


いやぁこんなのが大好きです。堪らないですよね。

綺麗なつくりって現行ですともうアタリマエな顔して蔓延ってますので、こういう不恰好なつくりにこそ愛が湧いちゃうんです。

流石に表に出ていたら話は変わりますけれど。


ある種古着の醍醐味であると考えております。

そんなブッ飛んだ、イカれた部分は裏に隠して自分だけの秘密にしちゃって、人様には外側のカッチョイイとこだけ見せつけてやる、ってのも粋なんですよねぇ。